2009年10月24日土曜日

高齢者と惣菜

スーパーではかなり以前から、小口の惣菜が売られている。

量は一人分、気にしなければ他の器に移し変える必要もないような容器に入っていて、中身は家庭的な惣菜が多い。

一人暮らしの人や料理が面倒になってきた高齢者には都合が良いようだ。

それはそれでニーズがあるから商売としては成り立つだろう。

最近では、コンビニも高齢者向けの商品を揃え始めている。

先日テレビを見ていたら、コンビニの商品開発者が、コンビニの惣菜は買ってそのまま器に盛れば、さも自分で作ったように見えるので活用してほしい旨の話をし、商品を自慢していた。

確かにマーケットとしてはこれから有望かもしれないが、多くの高齢者がこのような小口の惣菜を望んでいるのだろうか?

最近新聞に載った記事に、「東京ガス都市生活研究所が高齢者を対象に昨年夏から今年1月にかけて行った調査によると、65~84歳の女性の9割が『毎日の食事を自分で作りたい』と思っている」というものがあった。

意外に多い数字なので驚いたが、一方で、高齢になれば物忘れや体力の衰えなどから、普通に料理することは難しくなってくるだろう。火を使うことも要注意事項となる。

筆者がお世話になっている会計士さんの家族は、ご母堂と2世帯同居で暮らしている。

食事の時間帯など生活のリズムが合わないため、ご母堂は個食だそうだ。

火の回りが心配なので宅配の弁当をとっているそうだが、なかなか気に入ったサービスがなく、頻繁に業者を変えているのだという。

このように高齢者に対する「食」のサービスを見ると、高齢者の中には自分で料理したいと思っている人がかなりいるにもかかわらず、高齢者は何もできないから売っているものを黙って食べろと言わんばかりのサービスしかないように思える。

売る側にしてみれば手間要らずで便利だろうと主張するだろう。

しかし、食材からきちんと料理しなくても、少しは手間をかけて食事を自分で用意して食べるというプロセスは、簡単で手抜きでもいいから、必要ではないだろうか。

少しでも手間を必要とするような商品があれば、高齢者にとっても一人暮らしの人間にも選択肢が増えて良いような気がするが。

手間要らずの行き過ぎた便利さは要注意、人間を怠け者にするだけだ。

わずかな手間でもそこに工夫があれば、人間らしい生活になり、頭も使い、心身には良いはずだ。
ついでに言えば、充分体も動き自分で料理できる人間が、出来合いの惣菜を買うなどというのは、余程の事情がない限りもってのほかだ。

コンビニ的な食生活を送っていると、いずれ「食文化」のような言葉が死語になる時代がやって来るかもしれない。


2009年10月15日木曜日

マクドナルドの高収益が教える危険なシグナル

マクドナルドの高収益が大きなニュースになった。

これだけを見ると、ユニクロと同様にいまの経済不況の中にあって、勝ち組の代表格で素晴らしいことのようにも見えるが、その裏には食生活の根源にかかわる大きな問題が横たわっているという「陰」も見えてくる。

安い材料を国際的にかつ安定的に調達して低価格を実現し、高収益を上げること自体非難するつもりはない。

デフレスパイラルなどという問題は、ここでは論じない。

問題は、このような食品に人が群がり食していることにある。

アメリカの低所得者層は頻繁にファストフードを利用しているようだが、それは食費に使える経済力が弱いからだ。

そして低所得者ほど不健康な生活を送っているように見えるが、それは摂取する食品の栄養やカロリーなどに問題(偏り)があるからではないか。

結果として、低所得者ほど肥満が多いような印象を受けるのは気のせいだろうか。
日本でマクドナルドが空前の高収益をあげるということは、それだけ売れているからだが、なぜ売れるかといえば、価格を下げているからに他ならない。

ある医者が、面白いことを言っていた。

ファストフードの食品には脂質が多く使われているが、これは一種の麻薬みたいなもので、また食べたくなるものだ。また日本人の脂質摂取量の増加カーブは糖尿病患者の増加カーブと同じような軌跡をたどっている。というものだった。

そう言えば外食の弁当などに、揚げ物はお約束事のように必ずと言っていいほど入っている。

脂質を利用して味を濃くし、しっかり食べたような気にさせる仕組みなのだろうか。

マクドナルドの味も同様に思える。

件の医師によれば、現代の子供の多くは小さいうちからこの手の脂質を摂取しているので、脳がしっかりとその味を記憶しているらしい。

そうすると、摂取を止めたくてもなかなか止められないと言う。

余談だが、筆者は昭和29年生まれだが、当然小さい頃はお袋の味で育っているので脳が記憶している味の基本形は和食である。

(もっとも成長期は化学調味料が出始めの時で、味の素を食べると頭が良くなると言う宣伝が巷に蔓延していたため、世のお母さんたちは、子供に味の素をたくさん食べさせていた、そんな時代だった。その影響もあるので決して健康とはいえない様な気がしている。それにしても、味の素食べて頭良くなった人いたんですかね?)

そこで見えてくるものは、マクドナルドの戦略が、低価格で誘い、味覚を支配してリピーターに仕立てるという構図だ。

そうなると悪の連鎖が始まる。

経済不況で収入減
↓↓↓
食費の削減
↓↓↓
低価格の外食利用促進
↓↓↓
戦略的な味付けに支配される
↓↓↓
外食を止められなくなる

といった悪循環だ。

経済的な「貧困」が食生活の「貧困」を生み、そのサイクルが始まる。

経済的な面をいうのであれば、食材を自分で買って自炊する方がはるかに経済的で安心なものが食べられる。

工夫すればお弁当も簡単に作れる。

もっとも手間がかかるので時間に制約がある場合は致し方ないが、それを理由に自分で料理することを避けていては、ますます食生活の「貧困」を助長することになる。

経済的に「貧困」であるなら、せめて食事のスタイルは「豊かに」したいものだ。

筆者も若い頃はマクドナルドも食べていたが、いま食べたいとは思わない。

現代の子が高齢者になったとき、マクドナルドを欲するのか否か、興味がある。

そういえば、最近会った医者や大手製薬メーカーの人間が異口同音に、日本人の食生活が一昔前に戻れば健康になれる、といった内容のことを言っていた。

国は健康増進を国民に呼びかけ、企業や医療関係者は努力をし、国民は相変わらず不健康な食生活を送り、医療費が増大し、儲けるのは製薬会社(最近ではまともな医者は儲かってないようです。儲かるのは医療機器メーカーと製薬メーカーです)、その儲けとなるお金(保険料)を国民がせっせと納める、という構図が美しいですかね。